1.実験条件について
3枚の杉板を用意しました。
A :5~6年経った杉板
B :「うずくり」の杉板
C :黒っぽい杉板
A は、私のところで標準的に使う、巾17cm 厚さ15mm の杉板で、5~6年経っています。普段足元に置いていて、凹みや傷などもあり、「日常的な状態」を再現します。
B は、「うずくり」という木の目を際立たせるために表面を軽く削る加工をしてあるものです。暮しの中では、テーブルとか机とかの下で、常にほぼ同じ位置で足や椅子で「擦れる箇所」と考えます。
C は、元々黒っぽい板で一般的な床材としての杉板とは違います。
この板は油分が多いので、「年に1度程度ワックス掛けしてよく手入れされている」状態の再現とします。
その3枚の杉板に水を垂らし、下記の経過を観察します。
ただ、水ではわかりにくいため 「麦茶」を垂らしました。
2時間後の状態
それを拭きとった状態
拭きとって1時間後の状態
を写真に撮りました。
【実験日:9月4日午後 天気:晴れ】
麦茶を垂らした状態 各板
▼ A
▼ B
▼ C
どれも、ぷっくりと玉のようにふくらんでいます。
2.2時間経過後
麦茶を垂らして2時間経ちました。
A の板にもう1カ所、追加しました。
杉板は基本的に、赤っぽい色の「赤身」と、白い部分の「白太(しらた)」が混ざっています。
最初垂らした箇所が「赤身」部分ですが、「白太」の部分との違いもあるかもと思い、あわてて追加しました。
A(1)が「赤身」 A(2)が「白太」 です。
2時間経過後 各板
▼ A(1)
▼ A(2)
▼ B
▼ C
A(1)、A(2)、B ともに、水分が浸みこんで広がっているのが見られます。
C はほとんど浸みこんでいません。
A(1)、A(2)とも、浸みこみ具合はだいたい同じ程度です。A(1)の「赤身」のほうが、色が濃いだけに、浸み込んでいる範囲が目立つ気がします。
Bは、表面が荒れているせいで、浸みこみ具合が大きいです。最初に垂らした時の「玉」のふくらみがほとんどありません。
3.拭き取る
▼拭き取り後 全体
拭き取り後 各板
▼ A(1)
▼ A(2)
▼ B
▼ C
A(1)は、地が赤っぽいので、跡が目立ちます。
A(2)は、あまり目立ちません。
B は、吸いこんだ量が多く、麦茶の色なのか元の汚れなのか・・よくわかりませんが、浸みこみ跡の輪の縁がはっきりと色が付いています。
Cは、若干浸み込み跡が見られます。ほぼ目立ちません。
4.拭き取り後1時間経過
拭きとってから1時間経ちました。
拭き取り後1時間経過 各板
▼ A(1)
▼ A(2)
▼ B
▼ C
A(1)A(2)ともに、吸い込んだ跡は、ほぼわかりません。
B は、乾けば白さは戻ります。ただ、浸みこみ跡の輪の縁が残っています。「年輪のように見える」と言えなくもないですが。。
Cは、色の濃さのせいか、浸み込み量はわずかでしたが、跡がうっすらと残っています。
5.結果
まずはじめに、それぞれの板が再現した状況をもう一度確認します。
A は、5~6年経った杉の床の「日常的な状態」です。
B は、暮しの中では、テーブルとか机とかの下で、常にほぼ同じ位置で足や椅子で「擦れてザラザラしてる箇所」です。
C は、「年に1度程度ワックス掛けしてよく手入れされている」状態です。
実験の結果、通常、床の杉板(板A)に水やジュースをこぼしても、それほど吸い込まない事がわかりました。ただ、擦れてザラザラして(板B)いいる場合は、吸い込みやすくなります。
今回の実験では、床に垂らしてから2時間後にき拭取りました。もっと長時間経てばもっと浸み込むとは思いますが、蒸発する部分もありますので、「水やジュースなどが床に垂れて気がつかない」時間が長いとしても、さほど変わらないような気がします。
ワックス掛けなど、年に1度程度やっていれば(板C)、なおさら水をはじき吸い込みにくい事もわかりました。
6.結論
『杉板の床に水やジュースをこぼしたらどうなるの?』
その答えは・・・
心配するほど、杉板は 吸い込みません。
気がついたら さっと拭き取れば まず問題ありません。
ただ、日常の中で、同じ動作を繰り返す場所があります。たとえば食事や仕事や勉強などで使う椅子、物の出し入れで動かす回数が多い家具などです。
その場合には、床が擦れてザラザラしてしまう可能性が高く、そこでこぼしたり濡らしたりした場合は、浸み込み安いです。なので早く拭取る事が大切です。
ワックス掛け等の手入れを年に1度程度やっていれば、浸み込みにくくなります。
これまで、床を杉板にした施主の方達は、キッチンでも、「(心配するほど)気にならない。大丈夫。」と言います。
杉に限らず ”無垢の木 ”は、元々の油分がありますから、「最初からワックスなどいらない」という人もいます。
家族みんなが裸足で歩いていれば、人の油分がワックスとなる という事なんですが、意識しなければ部屋の中をまんべんなく歩く事はありません。なので、一番始めと、2年に1度程度は、ワックスを掛けるといいと思います。
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最後に・・杉板にまつわる心配の全てに通じるのですが・・
無垢の木であり、12mm(15mm、30mm)とかある厚さ分が一枚の板ですので、少し浸み込んでどうしようもなければ、ペーパーを掛けてほんのわずか削れば、わからなくなります。多少深く削ってしまっても、全く問題ありません。
それが、合板フローリングだったり、がっちり表面が塗装されているものだったり、表面が印刷されたシートフローリングでは、できない事です。
それに、杉板は、時間とともに色が変わってゆき、全体的にベージュのような落ち着いた色になります。その変化の中で、多少色やシミが付いたり、傷や凹みが付いても、ほぼ気になりません。
それを知って、理解し、その上で「杉板っていいな」と思えれば、杉板の欠点というものは、「ない」と言ってもいいかもしれません。いや、「無い」と言うのは大袈裟でした。たぶん、使っている人達は 「 そんなものだよ 」と思っています。
では、「そんなもの」なのに、なぜ使うのか・・・それは
足触りがよくて、裸足になりたくなって、気持ちいいから です。柔らかくて、ほんのり温かくて、さっぱりして 気持ちいいからです。赤ちゃんでさえ、その感じがなんとなくわかるようです。
もし、そんな感じが あなたの求める暮しに合うならば、
杉板の床をお勧めします。
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・無垢の木がいいって言うけれど、なぜいいのでしょう?
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