この写真は、完成後約1年経ったある家の『杉板の床』です。
1年経ってすでに色が変わってきています。とてもいい色合いです。
足触りも気持ちいい。
奥様は・・
「これから湿気が多くなる時期だけど、楽しみです」
と言われました。
6月から9月頃までの梅雨そして夏の時期、杉板は「さらっ」としていてとても気持ちいいのです。
杉板や無垢の木を床に張った家ではみなさんに”床のさらっと感”を喜んでいただいていて、うれしいです。が・・・
奥様の「楽しみです」という言葉は、、、本当にうれしかったんです。
それはなぜかというと・・・この床は少し前まで全然違った状態でした。
黒っぽい・・・
これが、少し前の床です。
「どうして?・・何が違うんだ?」
これまでたくさんの家で杉板や無垢の木を床に使ってきましたが、1年後にこんな色になっているのを見たのは初めてでした。
杉板の1年後
これが、一般的な杉板の1年後の色です。違いますよね。
必死に原因を考えました。
「使い方の問題なのか?」
いえ、何か特別な事をしているご家族ではなく、普通に暮しています。
「赤身の多い杉板を使ったからなのか?」
杉板は、一般的には赤身という”赤または少し黒っぽい”部分と”白太”という白い部分が混ざっています。
上の「一般的な杉板の1年後」でわかるように、全体に色が飴色っぽくなりだしていても、色が濃い部分と薄い部分があります。濃い部分が”赤身”で薄い部分が”白太”。
赤身の部分が、「黒っぽい」わけではありませんよね。
ですから「赤身の多い杉板を使った」事が原因でもありません。
では、何が原因なのか・・・
思い当たる事がひとつありました。それは・・・
引渡後しばらしくて、奥様から感想のメールに、しばらく”床が毛羽立っていた”と書かれてあった事。。
毛羽立った理由
引渡の日、オイル塗りして塗り重なった部分が”濡れた感じ”になってはっきりわかる状態だったのを覚えています。
不手際があって工事が遅れに遅れたので、オイル塗りは引渡の前日夜遅く、または当日朝早くやったのかもしれない・・と思いました。
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先に断っておきますが、いまさら責任どうのこうのを言うつもりはありません。
床のオイル(ワックス)塗りをご自分でやる人も多く、せっかく無垢の木を床に使ったのに、オイル(ワックス)塗りのやりかたが理由で、あとで「がっかり」して欲しくなくて、参考にしてもらえるよう、記録しようと思いました。
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時間がなくて「とにかく塗らなきゃ」と、単に「塗る作業を終わらせる」という考えしかなかったのかもしれません。
その結果、オイルの仕様にも書かれている「よく刷り込む」事をやらなかった可能性を考えられます。
「床が毛羽立っていた」という理由は、それしか考えられません。
それがどうゆう事になるかというと・・・
木の表面が毛羽立っていると・・・
毛羽立った部分にホコリや床の細かい汚れなどが入り込み、取れなくなります。ホコリや細かい汚れが入り込んだ板の表面は、拡大すればデコボコです。
生活しているうちに人の足や置いた物によって毛羽立った部分の表面は擦れてなくなったのかもしれません。でも根元は、もうホコリ等が詰っているために「立ったまま」です。毛羽立ちは感じなくなったとしても、表面はザラザラ。。
表面がツルツルしてるほど汚れは付きにくくなります。流しの前の壁に、表面がツルツルの”キッチンパネル”を使うのは、それが理由です。
それとは間逆で”表面ザラザラ”ですから、どんどん汚れます。
1年後に見た床が”黒っぽく”見えたのは”板の色が変化した”のではなく、つまり、”汚れ”だったのです。
汚れた床の掃除
1年過ぎて、連休の時にご主人が床を掃除しました。
アクリルスポンジを使ってこすったら、床が全く違ったそうです。それだけ汚れていたという事。
ご家族は普通に暮していて、その中で徐々についていった汚れですから、気が付かなかったそうです。
その違いが、1枚目の写真(掃除後)と2枚目の写真(掃除前)です。
奥様はなんとなく「何か違う」という感覚(不安)を持っていらっしゃったのでしょう。
1年後に見て床の色のお話しをした時、奥様の中の感覚が「不安」と「落胆」になったのだと思います。
「杉板はいいですよ!」と言ってお勧めして、他の施主の家でも体験して楽しみにしてもらっていたのに、ガッカリさせてしまった事が、苦しかったです。情けなかったです。
新しくなった家で施主にガッカリさせる思いは絶対にさせない・・・そう考えているのですから。そして、私が提案する家は、床を木にする事がとても重要な事。
今回の事は2度と起こしたくない。そして、無垢の木の床を楽しみにされて採用した人すべてに”後悔”して欲しくない。
そのためにこの記録が、お役に立てたら、うれしいです。
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「見て欲しい」とご連絡いただき 伺い、キレイになった杉の床を見た時、ほっとしました。
キレイになった杉の床を、奥様は、喜んでくれています。
それが、本当にうれしかったです。
この家は、2度 生まれ変わったのかもしれませんね。
杉板の床/無垢の木の床のオイル(ワックス)塗りで注意する事
無垢の木にオイル塗り、ワックス塗りをする時、使う材料の説明書は必ずよく読んでください。
張ったばかりの板は、とっても”無防備”な状態です。製材の時に表面を磨いてはありますが、”ツルツル”の状態にまで仕上げる事は予算的に難しいです。
かけ出しの頃の仕事で、床のオイル塗りを塗装屋さんがやってくれました。一度塗ったあとにサンドペーパーを掛けていました。プロがやっても、一度目のオイル塗りで”毛羽立ち”が起きる部分があるという事です。
毛羽立ちを放っておくとどうなるか・・・それがこのコラムの話しです。
どの材料を使っても、基本的には”よく刷り込む”事が必要のはずです。
よく刷り込む事で、木に浸透させるとともに、余分なオイル(ワックス)を取り、表面の毛羽立ちを取る事ができます。
プロがやっても「毛羽立ちは起る」のです。もしご自分でやる時には「必ずそうゆう事が起きる」と思ってください。
後日でもいいので、様子をみて”カラ拭き”をしてみてください。
それだけで、その後の板の状態がぜんぜん変わる可能性があるのですから。。
数カ月して、黒っぽくなっていると感じたら「汚れ」を疑いましょう。良く絞った雑巾で拭いてください。あまり落ちないのなら、室内用の洗剤を使ってみてもいいでしょう。
キレイになったら、オイル(ワックス)を塗ってください。
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