2010年 完成時
2016年
外観は変わっていませんが、道路側の小さな三角の庭に施主は木を植えました。最初に植えた木は枯れてしまいました。Mさんはそのままにはせず2代目を植えました。すくすく成長しています。
2010年にこの家は完成し施主Mさんに引き渡しをしました。
そもそも「倉庫のような家」がご希望でした。(設計で)何も余計な事をしないで欲しい、という事です。(余計な事を、とは言われませんでしたが。)
最低限の家を作り、あとはご自分で家を仕上げていく事が、家づくりの目的でした。
引き渡し前には、入居する前にやらなければいけない『壁のしっくい塗り』と『床のワックス掛け』をされました。
その後、キッチン前の壁のタイル張り、玄関土間のタイル貼り、ロフトへのハシゴ取付、階段手摺の取替、照明器具の交換、などなど様々な事をやられました。
新築の工事でつけたいろいろな器具で10年経って残っているのは、ご自分で手配したキッチン、乾燥機付き収納棚、ユニットバスを除けば、便器くらい。良くやったものです。
Mさんは当初、求める家を「素うどん」のような家と表現しました。「簡素」というか「何も無い」という意味の「素」の家。
その家が10年後、Mさんの手で内部は仕上げられ、Mさんの「巣」に変わっています。
完成時の写真とその後の写真を比べ、家がどう変わったかを改めて見てみようと思います。
新築で建てた後の家の(10年間での) Before-After です。
2010年 1階ダイニングキッチンから玄関方向
2016年
2010年 1階ダイニングキッチン
2016年
ダイニングキッチンの掃き出し窓の外は崖で、当初はもともとあった白いフェンスがあったのですが、2016年にはフェンスを撤去しウッドデッキを作りました。
1階洗面脱衣。左:2010年 右:2020年
写真の角度が違うのでわかりにくいかと思いますが、2010年完成時の、洗面器、ミラーボックス、照明、スイッチ、コンセントは全部取替られています。しかも洗面器の前と横の壁にはタイルが貼られています。
階段・1階からの見上げ 左:2010年 右:2016年
階段・2階からの見おろし 左:2010年 右:2016年
階段もいろいろ手が加えられている。階段の手摺はかなり早い時期にウォールナット角材に取り変えられた。見上げ写真で奥に見えるのはロフトへのハシゴ(スチール製)。照明はMさんが取り付けたもの。
2階リビング 2010年
2016年
2階リビング 2010年
2016年
2階リビング 2010年
2020年
2階リビング 2010年
2020年
2階リビングも様々なDIYがされています。壁のしっくいは一度、北側の一面だけ塗り変えてあります。白は飽きて?グレーに。
Mさんがいろな事をやってずいぶん雰囲気が変わったのですが、一番この家の雰囲気を変えたの崖に生えていたモチの木です。すごい勢いで成長し窓をほとんど覆うようになってくれました。西側の窓で西日がきつくてMさんは試行錯誤していたのですが、今となっては無駄な努力でした。窓を覆ってくれて西日とともに外からの視線も遮ってくれて、この家は隠れ家のようになりました。ありがたい!
2年くらい前から住人となった猫。
10年掛け、試行錯誤しながら施主Mさんは、自分の手で自分の心地良い家を作り上げてきました。
設計事務所にもいろいろなタイプがあり、自分のコンセプトを実現する『作品』を作る人はいます。そういう作品を得て、その中での暮らしを楽しむ事は、ひとつの生き方です。Mさんにはそういう選択はなく、自分の手で自分好みに仕上げていく事が、「自分らしい暮らし」の実現方法です。
タイルを張ったりという、普通はなかなか手が出せない事までやる情熱もありました。その結果、私が設計した家は「大枠」として残っているだけで、内部はすっかり変わってしまい、本当に「Mさんの家」になりました。
私は、家の工事をして終了した時が『家の完成』ではないと思います。「Mさんのようにやってみたら」とお勧めするつもりはありませんが、何かしら手を加えてみるといいと思います。それが『自分の印を家につける』事の第一歩。『自分の印』があちこちに増える程、自分にとって『心地良さ』が増していきます。
塗ったり取り付けたり取り変えたりというDIYができなくてもいいんです。
絵をひとつ飾る事でも、花瓶に花を入れ自分の思う場所に置く事でも、気に入ってるのにしまっていた物を出して置いてみる事でもいいんです。「ちょっと高いな」と思っていた物を思いきって買ってみましょう。それといっしょに暮らし始める事でもいいと思います。
自分の気持ちが通じる物がある事でも、家は心地よい『居場所』に変わります。
ぜひあなたも家を、与えられた場所、ではなく、あなたらしい『居場所』に変えてください。
”考えている事・見ているもの”が「何か違う」と、ひとりで悩み続けないで、よかったら、家の話しをしませんか。
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