築60年の家を知る


先日、築60年の家を購入しようかとお考えの方からご相談があり、いっしょに見に行きました。

家が古い事は十分ご理解されていて、これから長く住むにあたり、フルに補修をするおつもりでした。都心から少し離れ、密集地ではあるけれどお隣りの家とのの距離も少し余裕あり「南北の風の抜けや視線の抜けの気持ち良さを感じられていて、もし購入する事になったとしたら、その家をどんなふうに変えるかを楽しそうに考えられていました。

私は当日簡単な実測調査をし報告書をまとめ、お送りしました。それも参考に出された答えは「購入しない」という事でした。


私は、築60年だろうが70年だろうが、古いからダメだとは思いません。ただ、それを現代の暮らしに合うように改修するには、それなりの工事が必要で新築程度の工事費が掛ります。

それに見合う理由や、その家への愛着やほれ込みが必要です。


築60年の家を知る

↑道路側外観

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↑玄関・・昔の家らしい


相談者の方は、築60年のその家を一度内見されていて、さらに朝や夜にも外からご覧になっていたそうです。使われなくなっていた時期が長かったから、あまりメンテをされたなかったかはわかりませんが、外部も痛みが目に付きました。それでも、全面的に改修する事前提で考えられていたのもありますが、先に書いたようにその家の良さを理解されていて「気持ちいい家になる!」という感覚をお持ちでした。


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↑2階北の部屋(北)

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↑2階南の部屋(東)

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↑2階南の部屋(南)

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↑2階南の部屋(東)この面が構造ラインより出ている


購入されなかった理由は、部分的に部屋を広げるために構造体の壁(構造ライン)を越えて外壁を作っていたため、補強工事費がかなり掛りそう、という事があったからです。

建築後に増築したのか?当初から部屋の広さを優先したためか?ともかく構造的に無理をしている部分のある家でした。

それを修正する事はできるけれど、その分余計に工事が増し工事費も増加となります。誰でもが家に幾らでもお金を掛けられるわけではありません。「そこまでお金掛けるなら・・」別の選択肢も出てきてしまいます。


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↑東側の外観。Aの部分の壁が出っ張っているのがわかる。

 2階の南の部屋(東)のところ


先にも書きましたが、私は古い家をひとくくりに「ダメ」とは思いません。古い家には時間を経た魅力がたくさんあります。今、そんな事を感じ、古い家を購入しリノベーションして暮らしを楽しむ人が増えています。古い家を購入するのには見るポイントはいくつもあるけれど、これから購入を考えている人に、ひとつアドバイスしたいと思います。それは 構造が素直かどうか を見る事。


構造が素直かどうかはどうすればわかるかと言うと、1階の間取りと2階の間取りを重ね、だいたい「壁の位置が重なるかどうか」を見る事です。単純には判断できないけれど、2階の外壁が1階より外に出ていたり、1階に壁がない位置に2階の外壁が乗っていたりする場合は、注意深く考える必要があります。


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↑不動産屋のチラシ

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↑実測図面


できれば工務店や設計の人に頼むといいのですが・・。その理由は、

1)木造の場合、簡単に増築改築ができてしまいますので、構造的に無理な事をしてもなんとかなってしまうのです。

今、そういうものを見て知った時に、私達工事する側は、知らんぷりするわけにはいきません。構造を合理的にする必要があり、余計に工事費が掛ります。

2)古い家の場合、不動産屋が見せる間取り図と実際の家の間取りが違ってる事はざらにあります。面積が増えていればリノベーションする費用も増えてしまいます。最初の計画が狂ってしまいますね。

上記2点により「その家の正しい姿」を先に知る事は重要だと思います。


今のように法規も求める性能も厳しいのとは違い、昔は何事にも大雑把。良く言えば”おおらか”。今はそんなの通らないけれど、そういう時代があったのです。

ただ、リノベーションの設計をする者としては、杓子定規に「現在の法律に適合してないのだからそんな古い家を買っても意味ない!」と思って欲しくないと考えます。


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↑玄関・・好き嫌いはありますが私は悪くはないと思います

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↑ふすま紙の柄

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↑約押入の巾で上りきる階段。現代の生活では勾配が急なので問題となりますが、これも古い昭和の家の特徴です。


時間を経たものが醸し出す気配や質感は、新品では手にする事ができません。先ほども書いたように今の家にはないおおらかさもあります。そういうものを味わう事は、とてもいい事だと思います。


機能や性能を高める事も、もちろんできます。ただし、どこまでできるかは予算との関係があり、工事を頼む人とは、最初によく話し合う必要があります。「全部はできないとしてもここまでできれば、まあ良いね」という気持ちは事前に持っておく必要があります。


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↑台所

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↑台所から脱衣場とその奥のお風呂

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↑お風呂。タイル張りとステンレスの浴槽。

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↑お風呂の窓。昔はともかく柱と柱の間目一杯に窓を作っていた。

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↑1階の居間。部屋の窓は掃き出し窓以外はだいたい床から40cmくらい壁がある窓が古い昭和の家の特徴。腰掛けるのにはちょうどいいが。


古い部分をどこまで許容できるか?好きか?は個人の感覚です。

古いとは言え購入するのにそれなりのお金が掛りますから、リフォームをどこまでできるのか?は悩みどころ。1度に全部できればいいけれど、そういうわけにはいかないとすれば、「だんだんと馴染ませていく」とか「育てていく」というような気持ちを持ち、古さ(場合によっては暑さ寒さも含めて)を楽しみ、おおらかに暮らしていける人には、ひとつの選択肢として考えてみて欲しいです。




古い家のリノベーションの事例


サトサト2


サトサト2

築50年の家をほぼフルリノベーション


サトサト


サトサト

築30年の家。2回目のリノベーション







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